蟲が生きる

生きることは戦うことでしょう?

「INNOCENT REPLICA」 良い作品でした

全年齢向け音声作品のボイスドラマです。

めっちゃ良かったのでブログに書く事にしました。

 

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 本編が90分もあったのだが、面白くてテンポがよくて、寝てしまうこともなく一気に聴取できた。

 これは前作「PERFECT BLUE」と世界観を同じくしている作品なので、前作を聴取してからだとより世界観が分かり易いかも。

 遺伝子操作で容姿も頭脳も身体能力も優秀な遺伝子を持って生まれてきた”デザインド”と、そうでない普通の人間”ネイチャー”の身分差のようなものがある近未来SF世界。ありがちな世界設定かもしれないが、その細部をしっかりと詰めてボリュームとクオリティーのある作品に仕上げているのは凄いと思う。

 前作も本作のシナリオも、大仰な哲学問答とか、世界の秘密とか、そういうのではなくて、その世界に生きる一人の女の子(今作はアンドロイドなのだが)の不安や悩みや葛藤みたいなものがメインで、感情移入できる。悪く言えばこじんまりしているのかもしれないが、僕はこういのが好きだ。疲れてしまった心に必要なのは、大きな物語ではなく、小さな物語だから。

 この作品内のディストピア世界は、それほど現実離れしていない。デザインドが抱くアイデンティティーの喪失感や、ネイチャーが抱く劣等感と無力感、或いはアンドロイド自身が感じるアイデンティティーの不安も、僕にとってあまりにも身近だ。

 前作も本作も、物語の中に””恋””があった。

 少しネタバレになるが、前作が哀しい恋の哀しい側面であったのに対して、本作は恋の持つ前向きなパワーを感じられる物語だったと僕は思う。

 「やっぱり恋なんだよな」というのが最終的な感想である。

圧倒的な虚無感、不安、疲労、希死を根こそぎ薙ぎ払ってくれるのは恋しかないのだと。

 夢を見させて欲しい。せめて恋の素晴らしさに、夢を見させて欲しい。希望を抱かせて欲しい。いくつもの小さな愛くるしい恋の物語たちとともに。